ちょうどルシオールが整備のため研究室へやってきたので今度はKAZと 比較。清水先生の手がけたこの2台。 どちらも、BBF+インホイールモーターという基本のテクノロジーは同じ。 しかし、サイズが全く違う。特にKAZの全長はほぼ倍の長さ。 KAZを作ってから、ルシオールを見ると、不思議なことだがその魅力に驚かされることがある。 KAZとルシオール。同じ技術を用いて作った電気自動車には違いないが、本質的に違う乗り物だ。 まず、モノに必要なものは「性能」と「機能」だろう。電気自動車が普及するのに必要なものもこの二つであるといえる。 これらに対する定義は人それぞれだろうが、性能は計測器で測れる物理量を持つもの、機能はモノの特長のうち測れないものだと私は解釈している。 すなわち、性能は「高い低い」の議論の対象になるが、機能は物理量としての大小はない。
(mm) Smart Luciole 全長 6,700 3,295 全幅 1,950 1,200 全高 1,650 1,335
ルシオールは、普通の人にとっては見た目はお母さんの買い物カー以外の何モノでもない。 しかし、小さいが、実はスポーツカーのマインドを持った乗り物である。 普段は大人しく走れても、一旦アクセルをくれてやれば、しばらくの間(モーターが過熱してネを上げるまで) 高い動力性能を武器に表情が豹変する。 それも、リアエンジン自動車そのままの、ある種「アブナイ」運動をしてくれる。 この特徴は「機能」ではないかと思う。 「オバちゃんクルマだがスポーティーなマインドを持つ」なんていうのは、計測器では測れまい。 財布を握っている奥さんをだましてでも、どうにかして好きなクルマを手に入れたいという男は 世の中にゴマンといるのだ。この機能は「素敵だ!」と思う人間は多いと思う。 | |
全幅の細いタンデム2シーターというのも、ある種の「機能」であるかもしれない。 建物のドアをすり抜け屋内へ入り、壁に寄せて駐車。 こんな芸当ができるのは、世界広しといえどもルシオールぐらいだろう。 家の中に入れても全く排ガスが出ないので、室内へ入ることができるのは電気自動車の 特徴だ。 タンデムのシートアレンジでなければこの全幅は実現しないから、やはり玄関から 家に入ろうとするのなら、これしかない。 もちろん、ルシオールがそんな使い方をされるとは思えないが、しかし ユーザーの使い方の幅は明らかに広がっているといえる。 これはルシオールの「サイズ」がもつ(「性能」ではなく)「機能」だろう。 |
|
それに対して、KAZは、まぎれもなく高「性能」な乗り物である。 311km/hを達成する非常に高い動力性能、3トンの巨体でベンツのSクラスも真っ青な旋回能力、もちろん室内の空間の広さ。 どれも計測可能な「性能」である。 そのどの性能についても『超高性能な怪物』、その化け物がKAZである。その象徴が311km/hにある。 300km/hを出せる自動車は現実には少ないから一般にも理解がしやすいだろう。 KAZと比べるとルシオールは、加速も室内空間も、何についても低性能である。 ただ、KAZは「高性能な汎用台車」であって、その利用方法が練られていないから、機能が見えにくい。 そう考えると、KAZは高性能低機能、ルシオールは低性能高機能な電気自動車なのかもしれない。 KAZとルシオールの魅力は異質なものなのである。 | |
HTML by Shiro Matsugara